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『イソップ物語』の中に、「狼と少年」という有名な寓話があります。悪戯好きの羊飼いの少年が、「狼が来た!」と、大声をあげて助けを求めるたびに、村人が驚くのを見てはおもしろがり、何度も村人にうそをついていました。ところが、ほんとうに狼が羊を襲ってきて日、村人に助けを求めても、誰も助けにきてくれませんでした。 この話は、子どもたちにうそをつくと、その結果が自分の身に降りかかってくることを教えるためによく使われますが、私たち大人にも別の意味でさまざまなことを教えてくれています。
この寓話から、「しつけのためにする脅しを単なる手段だけに使っていると、親と子のあいだに馴れ合いが生まれる」という教訓にもなりそうです。 言うまでもなく、子どものしつけには信賞必罰が不可欠な要件ですが、どうも世の親は、賞は喜んで与えても罰はなかなか与えたがらないようです。 たとえば、「自分で散らかした部屋を片付けないうちは、夕飯を食べさせない」と宣言したのに、結局は夕飯を食べさせ、「こんどやらなかったら、ほんとうに食べさせませんよ」などと、脅しとも弁解ともつかぬ言い訳をしたりします。 しかし、その脅しが単なる脅しに終われば、子どもにとってそれが親のうそになり、何の効果もなくなってきます。悪戯好きの羊飼いの少年にだまされた村人と同じように、「狼が来た!」と言っても信用しなくなってしまうのです。つまり、脅しをつねにしつけの手段として使っていると、親子のあいだにおかしな馴れ合い関係が生じ、信賞必罰が単なるお題目だけに終わってしまいかねません。
かといって、言いつけを実行しないたびに罰を与えていると、子どもの心を抑圧し、親に対するおびえを植え付けることになります。これでは一種の恐怖政治で、子どもが自主的に物事を実行しようという自立心は育ちません。もっともよいのは、脅しをしつけの手段に使ったら、3回に1回くらいは、「心を鬼にして」それを実行してみることです。 「もしかしたらほんとうに罰せられるかもしれない・・・」という不安感があってこそ、脅しが、しつけの手段として効果を持つのです。これは言ってみれば、心理学でよくいわれる「間欠強化」の応用です。 パチンコの例をとると、3回に1回くらい球が穴にはいると、3回を過ぎて球がはいらなくても「今度こそはいるのではないか」という期待感が生まれる効果が、この「間欠強化」です。しつけもこれと同じで、3回に1回くらいは脅しを実行すると、毎回罰する以上の効果を期待できるのです。 |
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