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子どもが親の弱みにつけ込んでくる作戦は、心理学の立場から見ても、見事というほかはないものが少なくありません。その一つの戦法に、「泣きの戦術」があります。 日本の親たちは、子どもに泣かれるのにひどく弱いようですが、子どもはその弱点につけ込んできます。何かと言っては、泣いてわがままを通そうとするのです。
この親たちの泣かれることに対する弱さは、一つの大きな誤解から出ています。それは、子どもが泣くのは辛いからだとか、苦しいからだという考え方です。しかし、子どもは辛いことや苦しいことがあっても、必ずしも泣くとは限らないのです。 たとえば子どもが、道で転んだようなときを考えてみましょう。 子どもは体の動きがぎこちないので、道でつまずいても、バタリと思いっきり倒れ、したたかに体を打ち付けてしまいがちです。 ところが、大人でも痛がりそうなこういうときでも、そのままでは泣きわめいたりしないものです。見ていると、けっこう平気な顔をして立ち上がり、フラフラ歩き出したりします。ところが、母親の顔を見つけたとたんに、火がついたように泣きだすのです。 こういう子どもの行動を見ていると、子どもの泣きは、一般に考えられるような痛さや辛さの結果ではないことがわかります。むしろこの泣きは、親への甘えの行動そのものと言ってもいいでしょう。
親は子どもが泣いたからといって、「かわいそうだ」と甘い顔を見せるのは思い違いもいいところです。子どもは辛いことがあったから泣いているのではなく、甘えたいから泣いているのだと考えるべきです。 子どもの「泣きの戦法」を打ち破るには、まず「泣く」と「訴える」の二つの行動を分離させてしまうことです。「泣く」ことによって「訴え」を通そうというのが彼らの狙いですから、泣いているあいだは訴えを聞かない、訴えは泣かないで言わせる、という態度によって子どもに対応してみることです。 すると、この二つの行動について明確な対応ができるようになります。つまり、単なる「泣き」は甘えの表れとして厳しく拒絶、そして他方では、「訴え」は「訴え」として、ちゃんとその根拠を聞いてやり、理性的に対応してやるようにすることです。 |
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