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親が子どものしつけにどれほど意をくだいているかが、手にとるようにわかる一つの場に、乗り物の中があります。休日の朝など、郊外の電車に乗ってみると、まだ疲れてもいない小学生くらいの子どもに、先を競って座席を取らせたり、取ってやったりしている親がいます。 ひどい場合は、座っている乗客の前で、さも小さい子だから席を譲ってくれと言わんばかりに、座れなかったことを子どもといっしょになって愚痴っている親さえいます。一般的に言えば、小さい子どもとはいっても小学校へ上がる直前くらいになれば、子どもは乗り物の中で立たせるべきです。
たかが、乗り物の座席くらいでそう目くじらを立てることはないと考える人もいるかもしれませんが、乗り物というのは、子どもが日常的に触れられる数少ない公共的な場であり、親と子という甘えの関係が成立しない絶好のしつけの場なのです。 ヨーロッパでは、きちんとした家庭の子どもほど、乗り物の中では立つという習慣が当たり前になっていますが、そこに、親のきめ細かい教育的配慮が働いているのを感じます。 つまり、まだ一人前でなく、料金も大人並みには払っていない子どもたちが座席に座らないのは当然という社会的ルールが徹底し、発育期にある子どもの身体的バランス感覚や足腰の鍛錬のためにもなるという認識が、社会全体に浸透しているのです。
日本では、そこまでは望めないにしても、一日でも早く子どもの大人への甘えを断ち切りたいと思うのなら、乗り物の中で立たせる訓練は、そのための願ってもないチャンスであることは間違いありません。 そして、もっとも理想的には、座りたいと思う子どもを叱りつけて立たせるのではなく、最初から子どもに、座りたいという甘えの気持ちを起こさせないことでしょう。 そのためにももっと有効と思われるのは、親自身が、つね日ごろ子どもといっしょに乗り物に乗るときに、座席に座ることに関心を示さないことです。 親が座ろうとせず、子どもにも座らせようなどと思わないで、素知らぬ顔をしていると、子どもは自分から座ろうとは言い出しにくくなるものです。こうした体験を通じて、折に触れ、子どもは座席に座るものではないことを言い聞かせていけばいいのです。 |
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