|
山の中に独りで籠もり、木の実やワラビを食っている世捨て人には縁がないでしょうが、そうでなければ、やはり知っておくべきことがあります。 『金銀や ゼニなき昔は 済みけれど 今はなければ 済まぬ世の中』 和同開珎(わどうかいちん)が発行されたのは708年。それまで物々交換の不便さを一挙に解決したのが、ここでいう銀銭銅銭のゼニです。 しかしそのあまりの便利さのため、1年もたたないうちに贋金が横行、銀銭が廃止になった経緯があるようです。このように大昔から生活にカネは必需のもので、現代はこの傾向がいっそう激しさを増しています。 以前、自動車修理工場の隣に住んでいた、ある大学教授が、 「こちらは頭を使う仕事だから、あまり音を立てないでほしい」 と注文をつけたそうです。自動車修理工場の社長、 「人をバカ呼ばわりにするな。我々だって頭を使ってんだー!」 と言い返したそうですが、どんな人間だって頭を使わずにメシが食えるはずはありません。 世間はやたらにセチがらいもので、とにかくお金がなければ、いくらキレイごとを言っても、どうにもならないのだから仕方がありません。 それでは、どうするべきでしょうか。 ただ漫然としてではなく、つねに世の動きを敏感に探る心がまえで、勇気と決断力がなくては、確実に人に遅れをとり、一度しかない人生で、必ずベソをかきます。 だいたい、歳月は35歳くらいまではゆっくり流れているらしい。 そしてその年代を過ぎると、時の流れは猛烈に早まり、年齢を重ねれば重ねるほどミサイルのように時間は流れます。そのときになって慌てても、すべては後のまつりです。もうどうしようもないことを、日頃から覚悟しておくべきです。
・ 良い配偶者に巡り会いたい。 ・ 安定した収入を得たい。 ・ 立派な家に住みたい。 ・ 老後はのんびり暮らしたい。 ・ 病気にだけはなりたくない。 などなど、本来、人間に共通した願望でしょう。 つまり、人間の欲望は、みんな、ほとんどと言っていいくらい同じだから、当然、そこには、パイの奪い合いというか、それなりの競争原理が働きます。いわゆる優勝劣敗があります。だから誰の前途にも、ひとしく困難な壁が立ちはだかるのです。すべてのことが思い通りに運ぶのなら、私たちに苦労はないし悩みも迷いもないはずです。 そのようにならないところに、共通して人間の苦しみがあります。 『山水も 木の根岩の根 くぐらずば 大海原に いかで出ずべき』 谷川の水さえ、なんの障害物もなく、一直線に山から流れ出てくるものではありません。堅い木の根っこに邪魔されたり、岩の下をくぐり抜けたりして、すなわち、いろいろな苦労の末に、ようやくの思いで海に到達しています。 世の中は、だれもがひとしく我慢しながら生きているのです。
せめて死ぬときくらい自分の人生に納得して死にたい。誰でも、そう思っているでしょう。 それには、自分の人生がどのようだったら納得できるのか、よく考える必要があります。 いまの若い人に主体性が確立されていない人が多く、なんとなく学校を出ただけで職に就かず、ただブラブラと親のスネかじっている輩も多いようです。 家に引きこもり、テレビゲームに熱中したり、インターネットで怪しげな情報ばかりにつかって1日を過ごす若者もいるようですが、これでは親も困るし、社会も困ります。 そんな若者に、次のような言葉の意味がわかるでしょうか。 「五里ほど行ったところに、ためになる良い話をする人がいるそうな」 とある人が言ったとき、するとそのなかの一人が、 「これからその話を聞きに行くんだ」 と言って腰を上げたところ、周囲の人が驚いて、 「何もそんなに急に行かずとも、明日にしたらどうだ」と。 するとその男は靴を履きながら、 「明日では遅すぎる。もし今夜のうちにその人が死んだら、どうするんだ」 と言って足早に出て行ったということです。 |
|
|||||||||||||||||||||
Copyright (C)2018. 子どもの立派な育て方・しつけ方 All rights reserved. |